まずはじめに、用途地域について簡単におさらいをしておきます。
住みやすいよりよい街を作るために、都市計画が決定された地域には用途地域が定められます。
用途地域は、用途の混在を防ぐ事を目的として決められ、用途地域ごとにそれぞれの目的に応じた建物が建てられるよう、高さや建蔽率、容積率などが制限されます。
全部で12種類存在しますますが、以下のように大きく三つに分ける事が出来ます。
・住居系
第一種低層住居専用地域などの住居専用の地域
・商業系
商業地域などの、店舗を建設するための商業用地域
・工業系
工業地域などの、工場を建設するための工業用地域
上記の通り、大きく3種類の用途地域に分けられている事から、よい住環境を求めるのであればやはり住居系の用途地域であることが当然かと思います。 用途地域によって考えられる住環境の問題を具体的に少し挙げてみましょう。
1.住宅系以外の用途地域にある宅地
第一種低層住居専用地域など住居専用の地域とは違い、工場や商業施設が近郊に建設される場合が多いにありうるため、住環境が悪くなる可能性が高い(騒音・異臭など)
2.商業地域・準工業地域に隣接した宅地
住居専用地域になっていても、隣の土地の用途地域が工業地域等だった場合1で指摘した住環境の悪化など同じ問題が発生する
3.中高層住居専用地域にある宅地
中高層住居専用地域は高層マンションが立ちやすいため、日当たりが悪くなる危険性がある
先に述べたように、用途地域によって建設出来る建物が決まります。 例えば、最も規制が厳しいといわれる第一種低層住居専用地域の場合、日影規制も厳しく高さ制限も厳しいため、せいぜい3階建てのマンションしか建てることが出来ません。またコンビニ等も建てられません。 そのため閑静な住宅を望む場合にはとても良い住環境となります。 しかし、静かな住宅地を望まないケースももちろんあります。 たとえば、駅前や都市部は商業地域である場合が多いのですが、駅近を望む場合やコンビニなど店舗の近さを優先する場合などは利便性の高い物件として評価を得られるケースもあります。 また、商業地域や近隣商業地域は上記理由などから分譲マンションとしてはむしろ人気が高い用途地域でもあるのです。 他にも、工業系(工業地域、準工業地域)の場合、工場が多いので、排出される土壌汚染や空気汚染が懸念されますが、一戸建てには不向きの地域であるため大規模な分譲マンションを建設するのに優れています。 そのためマンション販売業者への売却も期待できます。
このように、たとえ用途地域が住居系でなくとも、一概に住居に適していない物件とは言えません。 販売価格についても用途地域だけで決まるわけではなく、道路幅員や地形、周囲の状況など様々な要因から決定されます。 用途地域だけで判断するのではなく、周辺環境やその用途地域だからこそのメリットをうまく生かせることが出来れば、住居系の物件と同じように、もしくはそれ以上の価格で販売することも可能になるでしょう。
・最近では工場の跡地を分譲して売ることも増えています。このように工場などの跡地の場合、土壌汚染の可能性が高いため、調査や土壌改良を行う必要があります。
クリーニングの跡地であれば土地の価格が0円になるほどの土壌改良の費用がかかることもあります。土壌汚染が後になって発見された場合訴えられる危険性もありますので、必要であればしっかり調査を行う必要があるでしょう。
(以下2点は不動産取引の代理を行う不動産業者が行う注意点ですが、用途地域を隠すことは出来ない、ということを再認識して頂くための注意点です。)
・用途地域は不動産公正取引評議会の規約により、パンフレットやチラシ等の広告で表示必須項目となっている為、広告を行う場合は必ず表記しなくてはなりません。
・また、不動産取引において物件の内容や条件などについて契約をどのようにするか、というのを決めるために必要な情報が記載されている「重要事項説明書」には都市計画法、建築基準法等の法令に基づく制限の概要を記載する事項があるため、そこにも用途地域の内容等を記述する必要があります。
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