2021/12/09
住宅ローンが残っている不動産を売却したい
さまざまな事情により、住宅ローンがまだ残っている家をすぐ売りに出して、他の家に住み替えたい方も多くいらっしゃると思います。
例えば、一般的なケースは次の通りです。
・ローン負担が過大で、将来、その返済計画に不安が残る。身の丈にあった物件に移りたい。
・家族構成が変わり、現在の家のサイズが合わなくなった。
・転勤等によって転居を強いられる為、持ち家を売却して新しい土地に住み替えたい。
通常、住宅ローンの担保として、不動産物件には抵当権が設定されています。
抵当権とは、特定の債権(ローン)を保全するための担保権のことを指します。
提供された担保物を抵当権設定者(住宅ローン商品を提供する金融機関)の手元に留め、債権が弁済されない時はその担保物を競売し、その代金により、他の債権者に優先して債権の弁済を受ける権利のことを言います。
不動産の売買取引では、売主の借入金に対する抵当権を抹消したうえで物件を引渡すことが大前提となります。
仮に売主の借入金に対する抵当権をそのままにして売買取引を行った場合、以前の物件所有者である売主の借入金返済が滞れば、抵当権の実行により当該物件が競売にかけられるなどして、新しい所有者である買主が所有権を失ってしまうことにもなりかねません。
そのような事態を防ぐ意味で、売買取引の際に、売主には物件に設定されている抵当権の抹消登記を行うことが求められます。
抵当権を抹消する為には、住宅ローンを完済しなければなりません。抵当権を抹消できるか否かのパターンは次の3つに分類できます。
1.住宅ローンの残高と不動産の売却価格が同じ
ローン残高:3,000万円 売却価格:3,000万円
このケースは当然ながら、住宅ローンを完済することが出来ますので、問題なく抵当権を抹消できます。
2.不動産売却価格がローン残高に満たないが、不足分を自己資金で補うことができる
ローン残高:3,000万円 売却価格:2,200万円 自己資金:800万円
不動産市況が停滞している昨今、ローン残高よりも現在の物件評価額が下回ることは極めてよくある状況です。但し、このケースでは自己資金で値下がり分を補填出来る為、抵当権は抹消できます。
3.不動産売却価格と自己資金を合せても住宅ローンの残債が発生してしまう
ローン残高:3,000万円 売却価格:2,200万円 自己資金:300万円 残債:500万円
2.と同じ物件評価額とローン残高ですが、自己資金が足りないために、ローンが残ります。この状態で抵当権を抹消することはできません。
例3.のように、住宅ローンの残債が存在するケースでは、基本的には物件を売却することができません。
市況が好転するのを待つのも一つの選択肢ではありますが、それ相応のリスクを強いられることにもなります。場当たり的な対応であることも否めません。
残債がある状況で買い替えるには
現在のローンの残債がある限り、物件を売って新しいローンを組むことは絶対に不可能なのでしょうか。決してそうではありません。
残債がある状況でも利用できる「買い替えローン」を使う手があります。 買い替えローンであれば、売却後の残債を上乗せしてローンを組むことが出来ます。
具体的な仕組みと致しましては、現在の住宅ローンの一括完済に足りない残債分を新規のローン(オーバーローン)で調達し、まず現在の住宅ローンを完済します。
その後抵当権を抹消した上で新規の物件のローンを組む、と言った仕組み・手順になります。
買い替えローンの特徴
今ある債務を一本化するローンですので、ローン商品の種別としては、特殊な部類に入ります。
但し、現在では大抵の金融機関で取り扱いのある、ポピュラーな商品でもあります。
資金用途が自宅用物件の買い替えであることが借り入れの前提条件であり、担保不動産の評価額よりも、かなり多くの借り入れが可能となっています。
買い替えローンを利用するメリット
残債が新しいローンに上乗せされるということで、ネガティブなイメージを持たれる方が多いかも知れません。
しかし、買い替えローンを利用するメリットが多数あります。
1.新しい住宅に住むことができる
至極当然の話ではありますが、新築・築浅の物件に移ることで、これは実現できます。
2.優遇金利の設定がある
残債分については無担保の融資となるため、一般的に審査基準は厳しめですが、融資の承認が降りた場合、金利の優遇措置を受けられるケースが多くあります。(基準は金融機関により異なります)
3.所得税・住民税から残債分(譲渡損失)額を控除できる
税法上の、<譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例>を適用できる場合があります。
マイホームなどの不動産を売却して出た、その損失を他の所得から差し引ける措置のことです。
この特例を利用すると、損失を出した物件の譲渡を行った年だけでなく、その翌年以後3年以内における、総所得に対する所得税・住民税を減らすことができます。
仮に総所得よりも損失額のほうが大きい場合、その間の税金がゼロになります。
更にこの制度は、いわゆる住宅ローン減税、<住宅借入金等特別控除>と併用できます。
※適用を受けるには必要書類をそろえて、確定申告する必要があります。
譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例
適用要件
1.自分が住んでいるマイホーム(譲渡資産)を譲渡すること。
なお、以前に住んでいたマイホームの 場合には、住まなくなった日から3年目の12月31日までに譲渡すること。
また、この譲渡には譲渡 所得の基因となる不動産等の貸付が含まれ、親族等への譲渡は除かれます。
2.譲渡の年の1月1日における、所有期間が5年を超えるマイホーム(譲渡資産)で日本国内にある ものの譲渡であること。
3.譲渡したマイホームの売買契約日の前日において、そのマイホームに係る償還期間10年以上の 住宅ローンの残高があること。
4.マイホームの譲渡価額が上記(3)の住宅ローンの残高を下回っていること。
適用除外
1.繰越控除が適用できない場合
合計所得金額が3000万円を超える年がある場合は、その年のみ適用できません。
2.損益通算及び繰越控除の両方が適用できない場合
2-1マイホームの売主と買主が、親子や夫婦など特殊な関係にある場合
特別な関係には、生計を一にする親族、内縁関係にある人、特殊な関係にある法人なども含まれます。
2-2マイホームを売却した年の前年及び前々年に次の特例を適用している場合
(1) 居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の軽減税率の特例(措法31の3)
(2) 居住用財産の譲渡所得の3,000万円の特別控除(措法35)
(3) 特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法36の2)
(4) 特定の居住用財産を交換した場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法36の5)
2-3マイホームを売却した年の前年以前3年以内の年において生じた、他のマイホームの譲渡損失の金額について、特定のマイホームの譲渡損失の損益通算の特例を適用している場合
2-4マイホームを売却した年又はその年の前年以前3年内における資産の譲渡について、マイホームを買換えた場合の、譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例(措法41の5第1項)の適用を受ける場合、又は受けている場合
https://www.nta.go.jp/index.htm 出典 国税庁ホームページ
買い替えローンを利用する際の注意点
・売りたい家が想定していた金額で売れない場合を考え、売却価格を低めに見積もって資金計画を 考えておく必要があります。
・自宅の売却と新居の購入のタイミングが重要になってきます。
一般的に売却・購入いずれかの 難しい方を先行させ、できるだけタイミングを合わせるようにします。
売却先行の場合
購入資金にあてられる金額が購入前に確定します。
よって資金計画は立てやすいのですが、購入したい物件が見つからないこともあり、もし引越しまでに新居が決まらなければ、仮住まいを用意する必要に迫られることになります。
購入先行の場合
仮住まいなどの費用が発生することはありませんが、売却の目途がたたないと2重ローン状態に陥る危険性があります。
また、売却金額が最後まで確定しない為、購入時の資金計画が立ちにくい、ひいては狂いが生じる可能性もあります。
現在の住宅ローンの一括返済と、買換えローンの融資実行を同日に行わなければなりません。
十分な調査・下調べ(法務局の所在地など)を調べ、念入りな予定を立てることが大切です。
いずれにしても、住居の売却と購入を同時に行うと、労力・手間は倍かかります。
この2つを同時に任せることができる、信頼のおける不動産会社を選ぶことが最大のポイントです。
この2つを同時に任せることができる、信頼のおける不動産会社を選ぶことが最大のポイントです。